本レポートの概要|3.0 価値主導と比較表
この回のレポートは全4本に分割しています。本ファイルはその2本目、テーマは「3.0 価値主導と比較表」です。
2000年代に入るとインターネットの普及で情報格差がほぼ消え、リーマンショックによる企業・金融機関への不信、社会的不平等や環境問題への関心が重なった。この転換の中でMarketing 3.0が焦点を当てたのが「インサイト」であり、顧客自身が気づいていない深層の価値観や動機を、対話を通じて掘り起こす、あるいは企業側が新たに作り出すものと位置づけられる。
3.0では「競争」から共創(Co-creation)へとパラダイムが移り、企業理念・パーパス経営、CSV(Creating Shared Value)、株主だけでなく顧客・従業員・地域社会まで視野に入れるステークホルダー経営が重視される。エルメスが漫画家・竹宮惠子との協業でブランド価値を構築した例のように、品質以外の物語や文化的文脈で選ばれるブランドづくりが3.0的戦略の典型である。
本パートでは、時代背景から代表フレームワークまで11の比較軸で1.0・2.0・3.0を並べた完全比較表も収録する。顧客像が「大衆」から「合理的消費者」、そして「心・精神・感情を持つ全人格的存在」へと変化し、企業の社会的役割も製品供給から顧客満足の最大化、社会課題解決への参与へと段階的に広がっていく過程を一覧できる。
Marketing 3.0 — 価値主導の時代
時代背景:社会問題・不信・インターネット革命
2000年代に入ると、いくつかの構造変化が同時進行する。
- インターネットの普及:情報格差がほぼゼロになり、消費者が情報を発信する側に回る(双方向コミュニケーション)
- 金融危機(リーマンショック):企業・金融機関への社会的不信感が増大
- 社会的不平等・環境問題:格差問題・環境破壊への関心が企業評価に直結し始める
中心概念:インサイト(Insight)の探索
3.0のキーワードは「インサイト」。これはニーズとは異なる。
「インサイトとは、お客さんが気づいていない欲しいというものを掘り起こしてあげることでもあるし、お客さんの星(欲求)を作り出すやり方でもある」
競争パラダイム:競争から共創(Co-creation)へ
1.0〜2.0は「競争」——同じフィールドでいかに勝つか——が中心だった。3.0では「共に価値を作る」という共創モデルに移行する。商品は企業が一方的に設計するのではなく、顧客との対話の中から生まれてくる。
- 企業理念・パーパス(Purpose)経営:なぜ存在するのか、何の価値を生み出すのかを社会に示す
- CSV(Creating Shared Value):企業と社会が共に価値を創造する経営モデル
- ステークホルダー経営:株主だけでなく、顧客・従業員・地域社会・環境まで視野に入れた経営
- 道徳性・倫理・価値観:これらが競争優位の源泉になる(かつて無視されていたものが中心に)
おにぎりの例(3.0):「このおにぎりを買うと、オーガニック農家を支援できる」「環境負荷ゼロの包装を使用」——味・品質とは別の軸(社会的文脈・ブランド・背景)で選ばれる商品になること。
ブランドとしての3.0:エルメスの事例
エルメスのバッグは品質だけで選ばれているわけではない。「エルメスというブランドだから買う」——その背後には長年かけて積み上げられた物語・価値観・文化的文脈がある。エルメスは漫画作家・竹宮惠子との協業によりエルメス公認漫画を制作・販売するなど、ブランド価値の構築に多面的なアプローチを取っている。これはまさに3.0的戦略である。